有田焼きは分業化が進んでいます。有田を管轄していた鍋島藩が分業することで技術を守り、また専門性を磨いてきたからです。
分業とは、陶土を作る陶土業、デザイン業、量産のために石膏で型をつくる石膏型製作業、陶土から石膏型を使い形にする生地製造業、うわぐすりをつくる釉薬業、均質な絵づけのための転写紙業、最後に本焼成する窯元、さらに販売をする商社に分かれています。
このような分業化された各企業が全て残っていること、海外に頼ることなく産地内ですべての作業ができる構造が残っていることが有田の強みです。しかしその反面、分業には弊害もあります。利害関係が時に対立してしまうことです。
たとえば、製品の欠陥の押しつけ合い。土の問題かもしれないし、生地かもしれないし、釉薬なのか焼成なのか、いろんな要素が考えられます。押しつけ合っていては問題の解決になりません。
軽量強化磁器フッチーノの原料はまったく新し陶土です。有田では、さまざまな陶土を使っての製造技術が蓄積されていますが、陶土が変わると、すべての現象が変わります。製品化にあたっては、情報を共有し共通利害で一体となって問題解決に取り組む体制が必要でした。それが一業種一社の連携体を組織した背景です。
これまでも問題のあるごとに連携の強さが随所に発揮されました。渕野さんが開発した軽量強化磁器の陶土。それを製品化する技術。お客様のニーズに応える技術。すべてがあいまって世の中に出ていくことを痛感しています。
「人間は強くなければ生きられない。そして優しくなければ生きる値打ちがない」と言われます。企業も同じで、利益を出さなければ生きられない。しかし、世の中の役に立つような仕事をしなければ存在する意味がないと思います。